この夏にfacebookで公開致しました棚経日記を転載致します。
第1話 【棚経あるある その1 エアコンの話】
第2話 【棚経あるある その2 コンビニの話】
第3話 【お坊さん的記憶力】
第4話 【消える昭和の風景】
第5話 【棚経あるある その3 幽霊出現!?】
第6話 【高齢者の一人暮らし】
第7話 【棚経あるある その4 高校野球】
第8話 【棚経あるある その5 お茶菓子の話】
第9話 【般若心経恐怖症】
第10話 【棚経あるある その6 言われ慣れましたが…】
第11話 【素敵な線香立て】
第1話 【棚経あるある その1 エアコンの話】
2019/07/25
あるお宅の玄関を入ると、そこの奥様が、 「クーラーつけて冷やしてますんで。」と。
で、お部屋に入ると、 「暑っ!とにかく暑いー!!!」(←ワタクシの心の中)
奥様「ありゃ、冷えてねーなー」
ワタクシ「(心の中)これ絶対暖房やろ…けど言うに言えないし…」
ワタクシ「いえいえ、私は全然大丈夫ですよ。。。(顔は笑顔 」 で、時間もないのでお勤めを始める。
奥様「ありゃ!これ暖房になっとるが!」 と気付いて涼しい風が出るようになったころには既に家を後にする時間なのでありました。(終わり)
着物姿での暖房は正直苦行です…。 毎年こういう事例が1件あるかないかです。 でもこれも風物詩と思いながら、順調に今日も棚経のお参りをさせて頂きました。
『~シリーズ~』というからには、気が向いたら次回に続きます。 (こういうネタはいくらでもありますので。)
(ほどほどに)お楽しみに!!
第2話 【棚経あるある その2 コンビニの話】
2019/07/27
おはようございます。 コンビニの話・・・これめっちゃ分かります!
コンビニのトイレに入って、着付け直しもして(←段々衣がズレてくるので定期的に必要です)、トイレを出たら待ってた人に“ギョッ”とした目で見られる…。
トイレを出る時はいつも「誰もいないでくれー!」と思っております。
「お参り先で借りればいいじゃん」とよく言われますけど、トイレ借りるのもそれなりに気は遣います。
また言いやすい方と、言いづらい方も正直あります。
コンビニネタで言うと、店に入った時点で好奇な目線(特に子供)で見られることもありますし、若い店員さんがレジでいかにも平静に務めてる(ように見える)こともあります。
一応嬉しかったエピソードも加えますと、 「暑い中頑張ってらっしゃるんですね!」 とレジで言ってもらったことや、
落とし物を店員さんに届けたら、 「さすがお坊さん!心が広いですねー!」 とベタ褒め(別にお坊さんとか関係ないとは思うんですけど…)されたこともあります。
今日は遠方の檀家さんをお参りするので、必ずコンビニに入店します。コンビニでお坊さんを見かけてもぜひ温かい目で見てやって下さいね。
では行ってきます。 (続編もよろしく!)
第3話 【お坊さん的記憶力】
2019/07/29
おはようございます。 店員さんはお客さんのことをよく記憶していると言われますが、果たしてお坊さんは檀家さんのことをどのぐらい記憶しているのでしょうか。
以下ワタクシの例です。
・檀家さんの家、名前、顔は覚えています。
→これは檀務の基本だと思います。
・仏壇の位置、玄関からの経路はほぼ覚えています。
→なので仏壇の位置を変えていると、すぐに気付きます。
・家具の場所が変わっていたり、線香立てが新調されていたりしても大抵分かります。
→去年までマッチしか置いてなかったのに、今年はライター置いてるんですね、と言ったら驚かれたこともあります。
・認知症になったら大抵分かります。
→「今までだったらこんな言動ないような人だったのになぁ」ちょっとした変化に気付くことも仕事のうちだと思っています。
・その割には自分の奥さんが髪を切っても気付かなかったりします。
→大変申し訳ございません!
でも100%記憶しているわけではありませんので、これを読んだ方はわざと机の位置をズラしてお坊さんが気付くか試してみるのは決してしないで下さいませ。 今日も頑張って参りましょう!
お盆まで2日に1回アップを目標にやっていきます。 最終回までお付き合いを!!
第4話 【消える昭和の風景】
2019/07/31
">
おはようございます。
何が消えたかと言いますと、 『うちわで背中を仰いでくれる人』です。
クーラーにも扇風機にも頼ることなく、拝んでいる間、ひたすら後ろから横から仰いでくれるわけです。
初めて棚経に参り始めた13年前、少なくとも4軒はこういうお家がありました。正直最初はビックリでした。 しかし段々とそういうお家も減っていき、数年前からついに残るは1軒に。 先日、その唯一のおばさまのお家の仏壇の前に座ると、横には今まではなかった扇風機が。
あの心地よく後ろからポンポンと風が来る感触がついに味わえなくなりました…。
思えば、「子供の時、棚経の日には『うちわ係』をやっていました。」という声を複数人聞いたことがあります。 令和になって昭和の風景がまた1つ消えました…。
《追伸》 ちなみにそのおばさまは至って元気です。 ついつい「扇風機便利ですよねー」 と言ってしまったところ、 「ごめん、うちわの方がえかったかな」 と仰っていたので復活の可能性あるかも(ひそかに期待)…。
《さらに追伸》 朝日寺オリジナルうちわも検討中です。 計画倒れの可能性は大いにありです。 (写真はイメージ図です) では今日も頑張って参りましょう。
第5話 【棚経あるある その3 幽霊出現!?】
2019/08/02
おはようございます。
田舎の集落では、少しくらい外出しいても「棚経に上がって下さい」とばかりに扉全開、整えられた仏壇、そして前机には御布施。そんなお家も普通にあります。
ご丁寧な置き手紙まであったりして、ほっこりしたりもします。 (こちらも置き手紙を残して帰ります。)
ところが!!です。
そんなお家に上がり、お経をあげて、さて出るかと思って振り返った瞬間、 「うぉーっ!!」(←声は出してませんが)
背後におばあさんがいた!! 「耳が遠ゆーて聞こえんかった。なんかお経が聞こえてくる思ったら来られとったんじゃな。」
こういう場合、笑顔で 「居られるのに気づきませんですみませんでした。でも少しでもお会いできて本当に良かったです。お元気されてますか?」 みたいに言うようにしています。
でも初めてこれを経験した時は正直幽霊が出現したかと思いました。大変失礼……。 でも、世の中物騒です。ドロボーにはくれぐれもご注意下さい。
さて棚経も順調に中盤に差し掛かって参りました。 では今日も行って参ります!
第6話 【高齢者の一人暮らし】
2019/08/04
おはようございます。
前回は少し失礼な話だったので、今日は真面目なお話を。
家々をお参りしていて一番気に掛けているのは一人暮らしの高齢者です。 年々足腰が弱ってゆき…で、ついに玄関に鍵が…。
つまり施設入りか入院のどちらかです。
そしてしばらくしてついには訃報が…。
そんなことが毎年必ずあります。
「今年も元気にしてるかなー」と、玄関の扉に手を掛ける時は何とも言えない緊張感があります。 「ああ良かったー!今年もお元気だった。」 とホッとすることもありますし、ようよう一人暮らしされているような方を見ると、 「もしかしてお会いするのはこれが最後かも…」 と正直思うこともあります。 今年も既に何件かありましたけど、どちらかと言うと去年入院していた人が復活していた好例のほうが多いです。 高齢者に限らず、一人暮らしに限らず、一年一年誰もが年を取ってゆくということを肝に銘じて、お身体には気を付けましょう!
今日も暑くなりそうです。 棚経も約半分のスケジュールを消化しました。 では行ってきます。
第7話 【棚経あるある その4 高校野球】
2019/08/06
質問です。
Q.9回裏 2アウト満塁 1点差。 ピンチ抑えて終了か!?それとも逆転サヨナラか!? 手に汗握ってテレビにクギ付け。 そんな時にお坊さんがやって来たら…どうしますか?
A.
1:追い払う。
2:テレビ付けたまま。
3:消音でテレビは付けたまま。
4:渋々テレビを消す。
夏の甲子園が本日開幕(だそうです)。 こういうことは必ず起こり得ます。もしブチ当たってしまったら大変申し訳ございません。 分かってはいてもこういう時は、こちらのスケジュールもありますし、時間通り家に入らせてもらうようにしています。
ちなみに、
1:追い払われたことは幸い未経験です。
2と3:何ならお経上げながらでも聞いています。
4:表情や仕草で「だろうな…」と結構分かります。 私はテレビ付いたままでも失礼とも何とも思いませんし、平気なんですけどね。 試合は気になるけど、消さないと失礼かも…と気にする方は3の消音ぐらいがおススメかと思います。 今年もこんな場面があったらすみません!仕方ないので許してやって下さい。
※なお、これはあくまでワタクシ個人の感覚です。お坊さんも性格は十人十色ですので、臨機応変に対応してあげましょう。
では今日も行って参ります!
第8話 【棚経あるある その5 お茶菓子の話】
2019/08/08
おはようございます。
結論、ワタクシなら
1.「お茶は要りますか?」と聞かれるか、
2.「必要ならお飲み下さい。」とペットボトルを下さる、
3.何もナシ、
本音の本音はこれらが一番ありがたいです。 何も出されなくても全く失礼とも何とも思わないです。本当に本当です。
お茶、コーヒー、紅茶、ジュース、果物、おはぎ、まんじゅう、ようかん、お菓子、アイスクリーム、かき氷、etc ご丁寧に気持ちを込めてお茶菓子を下さるお気持ちはもちろんすごくありがたいこと。それを大大大前提での話ですけど、一日数十件×約20日でこれらを本当に全てお腹に入れていくと多分ビョーキになります。
持って帰れるものならいいですが、コップに入った飲み物や、むき出しにされた食べ物を出されると無下に断るのも気を遣うんです・・・。 だって丹精込めて作った自家製のものを出される場合もありますし、「これは○○というこだわりのお店で今日のために調達して来ました」と言われることもあります。 また「せっかく用意して頂いたのにすみません、先ほどからたくさん飲み物頂いておりまして…」と丁重にお断りしても、 「そうは言っても少しでも飲まんと熱中症になるじゃろ」 「こんなに声出してるんだから一口でも飲まれ」 と言われる方も居ますし、 「去年は食べてくれたのに…」 と悲しい顔をされることもありますし、 その問答を巡って親子ゲンカが勃発することもあるあるです。
ちなみに先日内科医さんのお宅でそのお話を伺ったところ、 「朝昼晩の食事を調節すること。そして棚経終わった後の食生活に気を付ければまぁ大丈夫。」とのアドバイスを頂きました。(←時間外ヤミ診療!?)
どのお家でどんなものが出てくるか、また去年は頂いたか断ったかはある程度頭に入れておいて、極力均等に断るように心掛けてはいます。 みなさんくれぐれも暴飲暴食には気を付けましょう!
今日も頑張って参ります!
第9話 【般若心経恐怖症】
2019/08/10
真言宗の僧侶にとって般若心経は基本中の基本。
一般の方でも暗記している方は多くいます。
しかし!4年前のあるお宅(Aさん)で、一緒に般若心経をお唱えしていると、途中で文言が飛んでしまい、やり直しても同じところで飛ぶというドツボにはまってしまいました。
それ以降、他のお宅ではなんてことないのに、毎年Aさんの家が近づいてくると『般若心経恐怖症』に襲われるのです。
「やばい、経典なしで拝む自信がない…」 と、翌年は経典開いてお唱え。
いつまでもこれでは…と思い、次の年は恐る恐る経典なしでお唱え → 無事成功!!
以来、Aさん宅では般若心経を無事終えると、 「今年も棚経はこれで安泰でございます!」
Aさん「あの時は『お母さんが大きな声で拝むから、住職さんが惑わされたんでしょ!』と娘に叱られました。」 という会話がお決まりとなっております。
そんなAさん宅が今年も無事に終わりました。
では今日も行って参ります!
第10話 【棚経あるある その6 言われ慣れましたが…】
2019/08/12
おはようございます。
顔は笑って心では泣いてる場面…
・朝早いお宅にて 「朝夕だけお参りされてるんですか?暑いですもんね。」
→「いえいえ、一日中お参りですよー。」
・9時~10時ごろのお宅にて 「うちが1軒目ですか?」
→「いえいえ、7時台からで〇軒目です。」
・日中のお宅にて 「暑い時間にお参りせんでも朝晩にお参りされたら?」
→「いえいえ、朝夕もスケジュールはありますよー。」
・午後5時ごろのお宅にて 「うちで今日は最後ですか?」
→「いえ、あと〇軒あります。」
・7月 「棚経は7月で終わるんですか?」
→「いえ、8月14日までです。」
・8月10日ごろ 「今日ぐらいから回られてるんですか?」
→「いえいえ、7月後半から始まってます…。」
【↑↑いまココ】
・最後のお宅にて 「今日は何時から回られてるんですか?」
→「7時半頃からです。」
→「うわぁ本当にお疲れ様ですね。お疲れのところお参り頂くのも申し訳ない。うちはちょっとでいいから無理ない程度に拝んで下さい」
と言われたりすると一気に元気が出て、長くお経上げたり長話ししたりします。
今はサッカーで例えると後半30分からのキツイ時間帯、アイスホッケーでいうと守り切りたい終盤にアイシングの連続…みたいな感じでしょうか。
(ここで訃報があったりするとさらに-2のショートハンドぐらいのダメージ…)
棚経もまさに佳境です。今日も頑張って参ります!
第11話 【素敵な線香立て】
2019/08/14
">
おはようございます。
倉敷市某所のお宅にて、思わずライターを近づけようとしたところ奥様が「ニセモノですっ!!」と。
ホンモノにしか見えませんでした。
売り物のいわゆるニセモノの線香立ては、何て言うかもっともっと分かりやすいニセモノという印象があるんですけど、 「こんなそっくりな線香立てどこで売ってるんですか?」 とお聞きすると、 「これは主人が作りました。」 とのこと。
亡くなったご主人さんはこういう手作り品に拘ってたらしく、他にも《ホンモノに見える蛍のカゴ》や《ホンモノに見えるランプ》などを見せて頂きました。
危うく遺品を燃やすところでヒヤッとしましたが、とても素敵でほっこりしました。
棚経も今日が最終日、昨日までで全体軒数の97.13%が終わりました。 24時間マラソンに例えると、武道館から『負けないで♪』が聞こえてくる(と錯覚している)心境です。 残り0%まで決して手を抜かずに、今日も行って参ります!