8月15日晩恒例の水まつりが終わり、無事にお盆を締めくくりました。
台風の影響で屋内開催(20数年ぶり)でした。
さて、毎年水まつりでは主に棚経を経て感じたことを題材にお話しさせて頂いております。
今年は「お仏壇に見る現代の仏教事情」をテーマにお話しさせて頂きました。
以下長文ですが、お話しの要旨です。
(あくまで初盆を迎えた方々を対象としたお話しです。)
「お仏壇に見る現代の仏教事情」
◎匂いの出ないお線香の出現
棚経にお参りしていると、においや煙の出ないお線香を見かけることがままあります。
もちろん特に小さい子供などで線香の煙にアレルギーがある人や苦手という方も増えているとは思いますが、今年棚経にお参りしているとこんなお話を聞きました。
◎檀家さんから言われたお話し
ある70代の奥様より。
「ちょっとおじゅっさん聞いてよ。」と。
「うちの子(中学生)が学校で『線香くさい』と言われたんですよ。」と仰るのです。
続けてその方は、「私は子供のころから当たり前のことだと思って、朝夕仏壇を前にお勤めをしてきた。でもこの子の学校には核家族の子が多くて、仏壇のない家が多いみたいです。大切なことだと思うんですけど、こんなこと言われる残念な時代になったんですね。」 と言われておりました。
仰る通りだと思います。
そのお宅はいわゆる同居世帯なのですが、お住まいになっているのは新しい新興住宅地の一角にあり、住民は若い方が多いと見えます。
おそらくお仏壇を持っているお家は周りにほとんどないものと察します。
◎核家族化と仏壇事情
統計データを調べてみても、核家族化は戦後急速に進み、今なお進んでいます。
一定年齢以上の方には、子供の時はおじいさんおばあさんに囲まれて育ったという方はまだまだ多いのではないかと思います。つまりお仏壇がある日常で育った方々です。
でもあと20年ぐらい経つとどうでしょう。 仏壇に日常的に触れたことがあるのは年配の方だけで、他はますます仏壇を知らない人だらけになると予想されます。
◎本当に核家族だけが原因なのか
でも時代の流れとか核家族化だけに原因を求めるのは拙速だと私思っております。
なぜなら、同居世帯でも仏様の大切さが伝承できているとは言い難い(と見られる)お宅もあれば、逆に核家族世帯でも子や孫にそれらをきっちり伝えていけているお宅も見受けられるからです。
もちろん仏壇のある家に育つ方が身近ではあるでしょうけど、そうじゃなくても仏壇に親しみのある子育ては現に出来ている人は出来ているのです。
◎(補足)核家族でも仏壇を持つことはできる
また核家族化以外にも「仏壇離れ」の原因はあると思っております。
20年以上前に某仏壇屋さんが、地元の小学生の入学祝にミニ仏壇を配っていたというお話しを聞いたことがあります。(今ならいろいろ問題になりそうですが…。)この仏壇屋さん曰く、誰にでもご先祖様はある、仏壇は家族の心の拠り所である、ご先祖様に手を合わせる習慣を以持ってほしい、との願いからでした。
思えば、昔はいわゆる新家というお家でも仏壇を構える方は結構あったそうです。
(今も○○家先祖代々と書かれた位牌だけが置かれている仏壇をお参りに行かせて頂く檀家さんは何軒かあります。)
つまり、「仏壇=亡くなった人がいるから持つもの」という意識がすごく強まっているとも感じます。
◎子の迷惑はなる論は本当なのか、今一度よく考えて頂きたい!
毎年お盆になると『墓じまい』特集がテレビを賑わせていますが、いつも私最も気になっている言葉があります。
「子供たちの迷惑にならないように…」という枕詞。
皆さんにあえてお聞きしますが、みなさんお亡くなりになった方の供養を「迷惑だ」と思ってやってきましたか?
本当に迷惑だと思ってらっしゃる方は何とも申しませんけど、迷惑だと思ってない方はなぜ子供に対しては迷惑だと思う方が多いのか、非常に疑問であります。
いざと言う時に、仏事の右も左も分からない路頭に迷ってしまうのは、伝えていくということを大人がサボったからだと思います。
位牌の祭り方なんて学校では教えてくれませんので、伝えるのは大人しかいません。それを何もしてくれなかったほうが、子供にとっては迷惑だと思いますし、きちんと仏事のイロハというものを教えてくれる大人がいてくれる方が子供にとっては助かると思うのです。
(それを実際に継承するかどうかは当の後に残された者が判断すれば良いことだと思う。)
再度申しますが20年後30年後にどうなっていくかは今の大人に掛かっています。
まだ身近な方を亡くされて間もない初盆だからこそ、最初が肝心だと思ってお話しさせて頂きました。 ぜひよいお盆をお送りになって、今後も大切にしていって下さい。
(終わり)
長文お読み頂きありがとうございました。
お寺にとっては一番過酷なシーズンを無事乗り切って大変ホッとしております。
これからは秋の参拝旅行や来年の晋山式などに向けて、何かと案内事が多くなりますが、ぜひ来て下さいね。
【追記】
参拝を見合わせた方のために18日(日)のお昼ごろまで精霊棚とちょうちんは片付けずに置いておきます。どうぞお参り下さい。
ただし、17日(土)の10時半~14時半頃と、18日(日)の8時半~10時半頃は法事のためお入り頂くことができませんのでご注意下さい。