お盆お彼岸になると、にわかに墓じまいに関する報道が増えて久しいですが、3年前の投稿以降もメディアの墓じまい報道については追っております。
以前は、墓じまいをすることに潜むデメリットがほとんど報じられないことが気になっておりましたが、最近は(少しずつではありますが)デメリット面の報道も見られるようになりました。
しかしその一方で、気になっているのはそこから転じて「離檀料」に関する報道がにわかに増えていることです。
真実がうやむやなまま、センセーショナルな一部の例だけを面白おかしく取り上げられるのは世の常とは言えども、その裏で誤った認識を広められて困る人たちは必ず存在します。
このままではお寺や檀家といったものはどこへ向かうのか、大変危惧しております。
気になる点、言いたい点は主に以下の通りです。
1.なぜか蔓延る「檀家=お寺に墓地を持っている人」という報道。
2.離檀料○○○万円は極端なレアケース。
3.あまり正しく報道されない離檀料の意味。
4.離檀料請求に至った経緯は報道されない。
5.なぜこういう報道が増えるのか!?
1.【なぜか蔓延る「檀家=お寺に墓地を持っている人」という報道。】
最も理解に苦しむ点です。
檀家とは辞書によると、
「ある寺の信徒となり、布施などの経済的援助を持続して行い、葬式・法事などを行なってもらう家。」とのことです。
つまり「普段お世話になっているお寺さん」というのが本来の世間一般的な定義と言えます。
しかし、メディアで報じられる檀家の定義は、あたかも「寺院の墓地にお墓を持っている人(家)」というニュアンスがなぜかほとんどです。
その定義に当てはまるのは極々一部の寺院だけであり、その他多数の寺院では辞書上の定義で成り立っています。当地域でも寺院墓地を持っていないお寺さんはたくさんありますし(そのお寺さんは檀家ゼロということになるのでしょうか…)、逆に檀家さん以外を受け入れている寺院墓地を運営されているお寺さんもたくさんあります。
なのに、このような報道の仕方がなされるのは、その方が単純化できてわかり易く報道できるからなのか、それとももっと他意があるのか、分かりませんがとても理解に苦しみます。
しかもお寺には檀家の会員証や会員契約みたいなものは基本的にありません。一種の「信頼関係」で繋がっています。そんな長年築き上げられてきた信頼関係を、「お寺にお墓を持っていなければ檀家ではない」「檀家ではないからお寺のルールやしきたりは無視してOK」というような誤った情報の流布に壊されてしまうとしたなら大変残念なことです。
こういった両者の齟齬が「2」以降に続くような寺院トラブルを多くしている背景のひとつになっていると思っております。
昔なら勝手に代々伝わっていた「こういう時はこうするもの」的なしきたり(何が失礼で何が不義理なのか)を、知らない方が多くなっていますので、お寺の側が正しい情報を今以上に伝えていかなければならないと思います。
2.【離檀料〇百万円は極端なレアケース。】
「離檀料に○百万」なんて普通に考えてあり得ません。よっぽどごく一部のお話です。仮に檀家さん側に相当な落ち度があったとしても、普通には考えられないです。
3.【あまり正しく報道されない離檀料の意味。】
ではそもそも、その離檀料とは何なのか。
ざっくり言うと、“何らかの事情”で今までお世話になっていたお寺さんを離れることになった際、「今までありがとうございました。」
という意味合いで差し出す最後のお布施にあたるものです。あくまでお寺から請求するものでもなく、もちろん強制力もありません。
しかしそのことについて知らない方のほうが大半であるのが実情と思われます。
また、事情は様々なので4の項、そこに至る経緯も見る必要があると思います。
4.【離檀料請求に至った経緯は報道されない。】
ここはあくまでお寺目線の発言であることをあらかじめご了承下さい。
寺院が離檀料を請求する理由として、メディアの情報では「檀家が減ることは寺院にとって経済的に痛手となるため(その穴埋め的な意味合いで)離檀料を請求している」といった印象を受けます。
確かに檀家が減ると寺にとって痛手になることは事実です。ですが、離檀料を請求するに至った経緯としてはもっと他の所に問題の本質が隠れている、と(あくまで個人的な感覚として)考えております。
“円満離檀”の場合、1軒の檀家が離れるだけが理由で離檀料が請求されることなど、あまり考えられないです。もしかしたらお寺の年会費(灯明料、護寺費とも)を何年も納めてなかったとか、あらかじめ寺院によっては離檀料を定められているかもしれませんが、それが法外な離檀料になるとはとても考え辛いです。
一方で、円満にならなかった理由として前述の話に戻るのですが、お寺との「付き合い方」や「しきたり」について、情報が伝わりにくくなっている上に、情報の氾濫で、両者の感覚や認識に齟齬が起きているのが少なからず関係していると思わされます。
もちろん、だからといって法外な離檀料を請求する行為を正当化する理由はないことを念のため加筆しておきます。
5、【なぜこういう報道が増えるのか!?】
どうしてこうも、寺離れ・檀家離れ・墓離れ・仏教離れ…、日本の文化をわざわざ壊すほうへ誘導するような報道が蔓延するのか…と嘆かわしいですけれども、今の憂うべき寺院側の現状や責任もあると思っております。
そのような報道が多い(視聴率が取れる!?本が売れる!?)と言うことは、それだけ国民の不満や困惑がお寺に対して溜まっている裏返しでもあります。
そこは情報の氾濫に振り回されないぐらいの「信頼関係」を強固に築くこと、またその築き方を今の時代に合わせて見つめ直していくこと、良好な寺檀関係を保って、「良いお寺さん」「親しみのあるお寺さん」が全国にもっともっと広がるように我々僧侶は現実を受け止めて頑張って行かないといけませんね。
おそらく全部のお寺で出来れば、このような報道は消えゆくはずです。
仏事相談、私にできることでしたら何でも相談に乗りますのでお気軽に。